海を守る暮らしガイド

海運・漁業従事者のための実践ガイド:船舶からのプラスチック排出をなくす具体策

Tags: 海洋プラスチック, 海運業, 漁業, 廃棄物管理, 事業貢献

海は地球上の生命を育む重要な源であり、私たちの生活や産業活動に不可欠な存在です。しかし、海洋プラスチック汚染は深刻な環境問題として、生態系への影響、漁業への損害、さらには人体への影響が懸念されています。特に、海上で活動する海運・漁業からのプラスチック排出は、その特性上、直接的に海洋環境へ影響を及ぼす可能性があります。

この記事では、海運・漁業に携わる皆様が、船舶からのプラスチック排出を削減するために実践できる具体的なアプローチを、事業活動におけるメリットと合わせてご紹介します。海洋保全への一歩として、ぜひ本ガイドをご活用ください。

船舶からのプラスチック排出が海洋に与える影響

船舶活動におけるプラスチック廃棄物は、その発生源が多岐にわたります。漁業においては、漁網、浮き、ブイ、漁具の包装材などが挙げられます。海運業では、貨物の梱包材、船員の生活ゴミ、メンテナンス用品などが主な発生源です。これらのプラスチックが海洋に流出すると、以下のような問題を引き起こします。

このような状況を踏まえ、船舶からのプラスチック排出削減は、環境保護のみならず、持続可能な事業運営のためにも喫緊の課題となっています。

船舶内でのプラスチック廃棄物管理の基本原則

船舶内でのプラスチック廃棄物管理は、陸上施設と異なる制約があるため、計画的かつ徹底した対策が求められます。以下の基本原則を参考に、自社の状況に合わせた管理体制を構築することが重要です。

  1. 発生抑制(Reduce):
    • 代替素材の活用: プラスチック製の梱包材や使い捨て備品を、リサイクル可能な素材や生分解性素材、再利用可能な製品に置き換えることを検討します。
    • バルク購入: 食料品や日用品は、可能な限り大容量の製品を購入し、包装材の量を削減します。
    • 製品設計の改善: 漁具や船舶部品の選定において、耐久性が高く、リサイクルしやすい素材を選ぶ視点も重要です。
  2. 分別・保管(Separate & Store):
    • 明確な分別基準: 船内で発生するプラスチックごみを、種類(ペットボトル、ビニール、発泡スチロールなど)ごとに明確に分別する基準を設けます。
    • 適切な保管設備: 分別されたプラスチックごみを、風で飛ばされたり、波で流されたりしないよう、蓋つきの容器や専用の保管スペースに安全に保管します。
    • 乗組員への教育: すべての乗組員が分別と保管のルールを理解し、徹底して実行できるよう、定期的な教育と周知を徹底します。
  3. 陸上への引き渡し(Deliver to Shore):
    • 港湾施設との連携: 寄港地の港湾施設が提供する廃棄物受け入れサービスについて事前に確認し、適切に利用します。
    • 廃棄計画の作成: 長期間の航海では、発生する廃棄物の量を予測し、受け入れが可能な港湾での廃棄計画を立てることが重要です。
    • 国際規制の遵守: 海洋汚染防止に関する国際条約(MARPOL条約など)の船舶からの廃棄物投棄規制を厳守し、違反行為を絶対に防ぎます。

漁業におけるプラスチック排出削減の具体策

漁業においては、漁具に由来するプラスチック廃棄物が大きな問題となることがあります。

海運業におけるプラスチック排出削減の具体策

海運業では、船員の生活から発生するプラスチックや、貨物の梱包材が主な排出源となります。

事業者連携と技術革新によるアプローチ

個々の事業者による努力に加え、関連事業者や研究機関との連携、そして技術革新の導入が、より効果的な海洋保全に繋がります。

プラスチック削減がもたらす事業メリット

船舶からのプラスチック排出削減は、環境保護だけでなく、事業者にとっても多岐にわたるメリットをもたらします。

まとめ

海運・漁業に携わる皆様にとって、海洋環境は事業の基盤そのものです。船舶からのプラスチック排出削減は、決して容易な道のりではありませんが、一つ一つの具体的な行動が、豊かな海を守り、持続可能な未来へと繋がる大きな力となります。

この記事でご紹介した発生抑制、適切な分別・保管、陸上への引き渡しといった基本的な管理原則に加え、漁業や海運業それぞれの特性に応じた具体的な対策を実践することで、事業活動を通じて海洋保全に貢献することができます。ぜひ、この実践ガイドを参考に、皆様の事業活動におけるプラスチック削減への取り組みをさらに一歩進めていただければ幸いです。